【図解】不動産売買仲介の仕事内容や年収を徹底解説!

これから不動産業界を目指す方の中でも、「不動産売買仲介とは?」と聞かれて正確に説明できる人は多くありません。
同じ“営業職”でも、売買と賃貸では扱う金額も働き方もまったく異なりますし、「販売職」と「仲介職」の違いを理解していないケースも少なくないのが現実です。
- なぜ売買営業の方が年収が高いのか。
- どんなスキルが身につき、どんな働き方になるのか。
この記事では、不動産売買仲介の基本構造から、仕事内容・働き方・収入の実態までを図解でわかりやすく解説します。
【図解】不動産売買仲介について徹底解説
不動産売買仲介とは、住宅などの不動産を売りたい人と買いたい人の間に立ち、スムーズに取引が進むようサポートする仕事です。
不動産の売買には、契約書の作成や登記など、専門的で複雑な手続きが多く発生します。
これらを個人で正確に進めるのは難しいため、不動産売買仲介業者が両者の間に入り、取引内容の調整や必要書類の準備、契約締結までをサポートします。
つまり不動産売買仲介とは、売主・買主双方が安心して取引できるように、専門知識と経験を活かして橋渡しを行う役割を担う仕事です。
不動産仲介の基礎知識「客付け」と「元付け」の違いとは?
不動産の売買仲介には、「客付け」と「元付け」という2つに分けられます。
これは仲介の基本を理解するうえでとても重要なポイントです。
客付け仲介
まず「客付け」とは、家や土地を買いたい人(買主)を見つける不動産会社のことです。
買主を見つけて契約に至った場合、買主から仲介手数料をもらいます。
このように片方の依頼者(買主)からのみ手数料を得る取引を「片手取引」と呼びます。客付けの主な仕事は、ポータルサイトやオープンハウスなどを通じて買主を集め、希望条件に合う物件を紹介することです。気に入った物件が見つかれば、その物件を扱っている「元付け」の不動産会社に連絡し、取引を進めます。
元付仲介
一方で「元付け」とは、家や土地を売りたい人(売主)から依頼を受ける不動産会社のことです。売主の物件情報を登録し、宣伝や販売活動を行い、購入希望者(客付け側)との契約をまとめます。
売主からのみ手数料をもらう場合は「片手取引」、売主と買主の両方から手数料を得る場合は「両手取引」と呼ばれます。

つまり、「客付け」は買主側のサポート、「元付け」は売主側のサポートを担っており、両者が連携することで不動産取引が成り立っています。
売買仲介の不動産業界の位置付けは?
不動産業界の中で「売買仲介」はどのような立ち位置にあるのでしょうか。
不動産業界は大きく次の3つの業態に分けられます。
1つ目はデベロッパーです。土地を取得し、建物を建てて販売したり、自社で保有・運営したりする企業を指します。マンションや分譲住宅などを企画・開発するのが主な仕事です。
2つ目は管理会社です。デベロッパーや不動産オーナーから委託を受け、建物の維持管理や入居者対応、家賃の回収などを行います。物件を「運用・維持する」役割を担っています。
そして3つ目が仲介会社です。完成済みの住宅や土地など、すでに市場にある不動産を「売りたい人」と「買いたい人」の間に入り、取引を成立させる役割を担います。ここに「売買仲介」が含まれます。
つまり、不動産業界全体の流れの中で見ると、
「土地をつくる(デベロッパー)」
→「建物を管理する(管理会社)」
→「取引をつなぐ(仲介会社)」
という位置づけになります。

売買仲介会社は、デベロッパーや個人オーナーから依頼を受け、住宅を購入したい法人や個人の消費者に向けて営業活動を行い、契約まで導くのが主な役割です。
不動産売買仲介と不動産販売の違いは?
不動産売買仲介と不動産販売は、どちらも「不動産を売る仕事」ではありますが、ビジネスの仕組みや関わり方が大きく異なります。
不動産売買仲介は、自社で物件を所有せず、売主と買主の間に立って取引をサポートする仕事です。
売りたい人と買いたい人をつなぎ、契約がスムーズに進むように調整や手続きを行います。仲介会社はあくまで「取引の橋渡し役」であり、物件そのものの所有者ではありません。
一方で不動産販売会社は、自社で所有する物件を買主に販売する仕事を行います。
つまり、販売会社は「売主」の立場です。多くの場合、デベロッパー(開発業者)やハウスメーカーなどが建てた新築物件を扱い、販売専門の子会社や事業部として運営されています。
整理すると、
- 不動産売買仲介:自社物件を持たず、中古物件を中心に売主と買主をつなぐ
- 不動産販売:自社またはグループで保有する新築物件を販売する
このように、「物件を保有しているかどうか」が両者の最も大きな違いであり、扱う物件の性質(中古中心か新築中心か)にも違いが表れます。
比較表:不動産売買仲介と不動産販売の代表的な違い
| 不動産売買仲介 | 不動産販売 | |
|---|---|---|
| 取り扱い物件の所有者 | 売主(所有しない) | 自社(所有する) |
| 取り扱い物件の属性 | 主に中古物件 | 主に新築物件 |
| 収益化構造 | 契約時の手数料 | 自社物件の売却益 |
| 会社の属性 | 独立していることが多い | デベロッパーの子会社や事業部であることが多い |
不動産売買仲介と不動産賃貸仲介の違いは?
不動産の仲介には「売買仲介」と「賃貸仲介」がありますが、両者は扱う契約内容・物件・営業スタイル・収益構造のすべてに違いがあります。
扱う契約の性質が大きく違う
売買仲介は、分譲住宅や中古の戸建て・マンションなどの「不動産を売り買いする取引」を扱います。
一方、賃貸仲介はアパートやマンションなどの「貸し借り契約」を扱う仕事です。
取引金額と手数料にも大きな差がある
売買仲介で扱う物件は数百万円から数千万円と高額であり、仲介手数料は物件価格の最大5%(上限3%+6万円など)となるため、1件の契約で数十万円の報酬を得ることが一般的です。
これに対して賃貸仲介では、家賃相場が10万円前後と比較的低く、仲介手数料も「家賃1か月分」が上限となるため、1回あたりの収益は10万円前後にとどまります。
売買仲介と賃貸仲介では営業スタイルも異なる
賃貸仲介は「反響営業」が中心で、ポータルサイトなどを見て来店・問い合わせをしてくるお客様に対応するケースが多いです。
一方、売買仲介は「アウトバウンド営業(能動的な営業)」が主流で、自ら顧客を見つけ、提案・交渉を重ねて契約へと導く力が求められます。
このように、売買仲介は1件あたりの取引額が大きく報酬も高い分、競争も激しく、高い営業力と専門知識が必要な分野です。成果が明確に数字で表れる一方、働き方がハードになりやすいという側面もあります。
比較表:売買仲介と賃貸仲介の業務における代表的な違い
| 業務内容 | 売買仲介業務 | 賃貸仲介業務 |
|---|---|---|
| 契約内容 | 売買契約 | 賃貸契約 |
| 主な取り扱い物件 | 分譲住宅、中古戸建物件 | 賃貸用物件 |
| 収益化構造(手数料) | 取引物件価格(税抜)×3%+6万円+消費税(取引物件価格が400万円超の場合) | 家賃の0.5~1か月分+消費税 |
| 営業スタイルの傾向 | アウトバウンド営業(能動的) | インバウンド営業(受動的) |
売買仲介業では1度に得られる手数料の金額が高いため、優秀な営業マンが集まり、ハイレベルな競争が繰り広げられます。
【不動産売買仲介】一日のスケジュールについて
不動産売買仲介の業務は大きく「事務作業」と「営業活動」の2つに分かれます。それぞれの役割と特徴を理解しておくことで、仕事の流れがより明確になります。
事務作業の内容
事務作業は、取引を円滑に進めるための基礎となる業務です。主な内容は以下の通りです。
こうした業務は、お客様対応をスムーズに行うための準備段階とも言えます。
営業活動の内容
営業活動は、お客様と直接関わる仕事です。主な内容は以下のようなものです。
売れている営業マンほど営業活動の比重が高く、1日の大半を外出や打ち合わせに費やします。
平日と週末の違い
平日は比較的落ち着いており、事務作業や資料作成、契約準備などに充てることが多いです。
一方、週末は内覧希望者や商談の予定が集中し、最も忙しい時間帯となります。
このため、週末を中心にスケジュールを組み立てる営業マンが多く見られます。
年間スケジュールと繁忙期
年間を通してみると、3~4月は転勤・入学シーズンで最も忙しい繁忙期です。
この時期は残業が増えることもあり、体力・気力の勝負になります。
反対に、7~8月は比較的落ち着いた時期で、休暇を取りやすく働き方に余裕が出るタイミングです。
一日のスケジュール例(平日)

9時半出社19時退社とする不動産会社が多いですが、繁忙期には顧客が多くなかなか事務処理が追付かず残業となる場合もあります。
なお、このスケジュールには記載しておりませんが、契約の締結があると時間がかかります。また突発的な問題も発生するので、売買仲介の一日の行動は忙しいといえるでしょう。
なぜ不動産売買仲介営業は辛いと言われるのか?
不動産売買仲介の営業職は、成果が明確で高収入を狙える反面、非常にハードな仕事として知られています。
理由1. 勤務時間が長く、休みを取りづらい
不動産営業は「忙しい」というイメージ通り、実際に長時間労働になりやすい職種です。
その理由は、扱う商材と顧客の生活時間帯にあります。
不動産は個人が扱う商品としては非常に高額であり、契約書の作成やローン手続き、登記準備など、営業マン自身が契約から引き渡しまで一貫して対応します。契約が増えるほど事務処理も増えるため、自然と業務量が多くなります。
また、購入検討者の多くは平日に仕事をしているため、営業活動はどうしても夕方や休日に集中します。
結果として、休日出勤や遅い時間までの対応が当たり前になり、休みを取りづらい環境が生まれやすいのです。
理由2. 商材が高額で成約しづらい
不動産は金額が大きいため、売買の意思決定には時間がかかります。
何度も打ち合わせを重ねても契約に至らないことがあり、成果を出すまでに時間がかかるのが特徴です。
日用品や保険などのように「売れやすい商材」とは違い、短期間で成功体験を得にくいことが営業マンにとっての負担となります。
特に結果が出ない時期が続くと、自信を失ったりモチベーションが下がったりすることも少なくありません。
理由3. ノルマが厳しく、プレッシャーが強い
不動産売買仲介の世界では、個人の成果が会社の売上に直結します。
そのため、目標(ノルマ)は個人ごとに設定され、しかも上位成績者の基準で決められるケースが多いです。
営業力の差が大きく出るため、経験が浅い営業マンにとっては非常に厳しい環境です。
ノルマを達成できない状態が続くと、
- 「自分には向いていないのでは」
- 「成果を出せずに評価されない」
といった自己否定感につながり、強いストレスを感じることもあります。
不動産売買仲介営業の魅力は?
不動産売買仲介の営業職は「厳しい」と言われる一方で、やりがいや成長機会の多い仕事でもあります。
魅力1. 営業力が圧倒的に身につく
不動産売買営業は、営業職の中でもトップクラスに難易度が高い仕事です。
高額な商材を扱うため、会社としても責任やリスクが大きく、営業マンには高い成果と行動量が求められます。
また、賃貸営業のように問い合わせ対応が中心の「反響営業」ではなく、自ら顧客を見つけて提案を行う「能動的な営業」が中心です。
この経験を通して、提案力・交渉力・課題解決力など、あらゆる営業スキルが鍛えられます。
さらに、不動産売買営業で培ったスキルは他業界でも通用するため、キャリアの幅が広がるのも特徴です。実際に、この経験を活かして独立開業する人も多く、「自分の力で稼ぐ」基礎が身につく仕事と言えます。
魅力2. 顧客の人生に深く関われる
不動産売買仲介は、単なる取引のサポートではなく、お客様の人生の大きな節目に関わる仕事です。
多くの人にとって不動産の購入は「人生最大の買い物」であり、営業マンはその重要な意思決定を支える立場にあります。
購入希望者とじっくり話し合い、希望や不安を解消しながら最適な物件を提案することで、自然と信頼関係が生まれます。
契約が成立した際には、大きな達成感とともにお客様から感謝の言葉をもらえることも多く、「人の役に立つ実感」を得られる仕事です。
魅力3. 成果に応じて高収入を得られる
不動産売買仲介は、成果がダイレクトに報酬へ反映される業界です。
基本給に加えて**インセンティブ(歩合給)**の割合が高く、契約数や売上に応じて年収が大きく変わります。
取引単価が高いため、1件の成約で得られる手数料も数十万円〜数百万円になることがあります。
そのため、努力と成果次第で20代でも年収1,000万円を目指せるなど、高い収入を得やすい環境が整っています。
もちろん成果主義ゆえに厳しさもありますが、自分の頑張りが数字と報酬で明確に評価されるため、モチベーションを保ちやすいという面もあります。
- 不動産売買仲介には売主を集める「元付け」と買主を集める「客付け」がある
- 商材の単価が高いため、営業の成果が出づらいがかなりの高年収を狙える
- 手に職が就きやすく、顧客の人生に大きくかかわれることが魅力
【売買仲介】年収は高いのか?
まず不動産仲介業全体でみてみましょう。
不動産仲介業に勤める給与所得者(正社員、非正社員、役員)の平均年収は約435万円です。
国税庁が2021年9月に公表した調査結果によれば、日本の民間企業で働く給与所得者の平均年収は433万円ですので、同等の水準ということになります。
また、以下の表に取扱高の多い不動産賃貸上位10社の年収ランキングをまとめました。なお、インセンティブ等を含めた額で表すため、同データの平均年収は口コミサイトから引用した値になります。
| 順位 | 会社名 | 平均年収 |
| 1 | 野村不動産グループ | 813万円 |
| 2 | 住友不動産販売 | 685万円 |
| 3 | 三菱地所リアルエステートサービス | 678万円 |
| 4 | オープンハウス | 669万円 |
| 5 | 積水ハウスグループ | 613万円 |
| 6 | 三井住友トラスト不動産 | 571万円 |
| 7 | 東急リバブル | 539万円 |
| 8 | 三菱UFJ不動産販売 | 539万円 |
| 9 | 三井不動産リアルティグループ | 518万円 |
| 10 | みずほ不動産販売 | 472万円 |
取扱高が上位10社の平均年収を見てみると、すべての会社が仲介業界全体の平均年収を上回っていることがわかります。不動産業界全体の中でも不動産売買仲介会社の平均年収は高水準であると推測できます。
売買と賃貸ではどちらの年収が高いか?
では、不動産の売買仲介業は賃貸仲介業と比べてどのくらいの給与水準といえるのでしょうか。以下のグラフに売買・賃貸それぞれの大手10社をまとめてみました。

以上のように上位5社は売買仲介、逆に下位6社は賃貸仲介となっており、売買仲介は賃貸仲介に比べて給与水準が高いことがわかります。
これは先ほども触れたビジネスモデルが起因した結果で、売買契約の手数料が不動産取得価格の数パーセントであるのに対し、賃貸契約の手数料が家賃1~2か月分となっており、契約1回当たりの手数料に大きな差があるためです。
まとめ
不動産売買仲介は、不動産業界の中でも「売りたい人」と「買いたい人」をつなぐ重要な役割を担う仕事です。
取引金額が大きく、契約手続きも複雑なため、専門知識と高い営業スキルが求められますが、その分やりがいと成果が明確に実感できる職種でもあります。
主なポイントを振り返ると次の通りです。
つまり、不動産売買仲介は「厳しさ」と「成長」が表裏一体の仕事です。
努力次第で高収入やキャリアアップを実現できる環境であり、営業としてスキルを磨きたい人、人生の大きな決断に寄り添う仕事がしたい人には最適なフィールドと言えるでしょう。




